酒さ(3)治療

まず、治療を始める前に、個々人の悪化因子を見極めることが重要です。
そして、その誘因を避ける、取り除くようにすることが最も必要です。
日常生活で大切なことはUVB~UVAまで十分にカバーするような日焼け止めを使用して遮光すること、帽子、衣服なども活用して遮光することです。皮膚のバリア障害や血管の過剰反応性のために各種化粧品に対して刺激性(ピリピリ感、チクチク感、痒み等)や乾燥感が多くみられます。特に紅斑性酒皶、酒皶性痤瘡のタイプで多いとされます。
化粧かぶれと誤診され、ステロイド剤などの使用により、酒皶様皮膚炎を発症することがあります。酒皶様皮膚炎は酒皶の素因を持つ人に生じ易いとされます。
 刺激性の石鹸やアルコール成分を除いた洗浄剤で優しく洗浄し、低刺激の保湿剤を使い、軽い液体のメイクアップファンデーションを使うのが最も刺激が少ないとされています。
(ニュートロジーナやDoveの石鹸を推奨してある文献もありましたが、それぞれに低刺激の洗浄剤、保湿剤を選ばれると良いかと思います。あるいは主治医に相談して)
赤い部分には補色の緑色のファンデーションを下に使うのが良いようです。

外用療法
FDA(U.S. Food and Drug Administration)では15%のアゼライン酸ゲル、0.75~1.0%のメトロニダゾールゲル、クリーム、ローションを勧めています。但し、妊娠時は避ける必要があります。
日本では処方できませんが、アゼライン酸はクリニック用化粧品として使うことができます。メトロニダゾールは院内製剤として作っている病院もあるようですが、製品は個人の責任の上で個人輸入するしか方法がないようです。
院内製剤例
 1%メトロニダゾール軟膏(10g)の組成
  メトロニダゾール      0.1g
  プロピレングリコール    0.05ml
  親水軟膏で全量       10gとする
藤本 亘 酒皶・酒皶様皮膚炎の現状:皮膚病診療 35:307-13,2013より抜粋

10% sodium sulfacetamide (+ 5% sulfer)のクレンザー、クリーム、ローションは紅斑、丘疹、膿疱の軽減に効果的です。毎日バリアを修復する保湿剤の使用は重要です。
過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン(ダラシン)、エリスロマイシン、タクロリムス(プロトピック)の外用も使用され効果がありますが、刺激感に注意が必要です。
プロトピック軟膏は紅斑には有効ですが、ステロイドと同様に酒さ様皮膚炎を誘発することがあるので、使用は最小限度にとどめる必要があります。
 外用レチノイド(トレチノインクリーム)は膠原繊維のリモデリングを助長し、血管内皮の成長を抑制するので酒さに効果的だそうですが、日本人の肌には刺激が強く注意が必要です。ただし、保湿剤を併用し、徐々に使えば長期のメインテナンスに有用とされます。

内服薬
短期的に症状を軽減させるには内服抗生剤が有用です。ただ、酒さでは日光に敏感な人が多く、光線過敏を誘発するような内服薬剤は避けるべきです。また長期に亘る使用では抗生剤耐性菌の問題があるので、なるべく短期間に留めるのが良いです。
2-4か月間のテトラサイクリン、またはイソトレチノインが用いられます。内服中止後1か月で4分の1が、6か月で2分の1が再発するそうです。米国では抗菌濃度以下の低用量のドキシサイクリン徐放カプセル製剤がFDAで認可されているそうです。
しかし、できれば抗生剤の長期内服は避け、長期のコントロールは外用で行うことが推奨されます。
イソトレチノインは国内では使用できませんし、催奇形性があるために、妊婦には絶対使用できません。
その他、マクロライド系薬剤、メトロニダゾール、βブロッカー、スピノロラクトン
SSRI、女性ホルモン剤などが使われているようです。しかしながら多くの薬剤は国内では酒さへの適応がありません。

レーザー、光線療法
色素レーザーやIPL(Intensive Pulsed Light)が効果的とされます。
米国では、種々の種類のレーザーが用いられているようですが、基本的にニキビの赤みに対して使う色素レーザーが効果的のようです。(にきびQ&Aの光線療法、レーザー療法を参照して下さい。)本邦での酒さに対するレーザー治療で科学的に、統計的に検証した論文はあまりないようでした。

鼻瘤の治療
中等度までの病変に対しては、イソトレチノインの内服が効果的です。高度になると形成外科的な手術や、レーザーアブレイジョンが必要になってきます。ただ、国内においては高度な例は少ないようです。

眼症状
やはり、テトラサイクリンの内服は効果があります。またsodium sulfacetamide/sulfurのクレンザーで洗顔するのが効果的とのことですが、日本国内では使用されているのでしょうか?

その他の治療
漢方薬も特に中年以降の女性で有効とのことです。腹力赤みの部位によって加味逍遥散や桂枝茯苓丸、温経湯などが使用されます。
また、レーザー治療後の紫斑や血管拡張などに対して使用されるビタミンK外用剤(アウリダーム)も酒皶性紅斑に有効であるとされます(田辺先生私見)。
女性患者では赤い色調を修正し、日焼け止め効果のあるカバーファンデーション、コンシーラーが各メーカーから出されていて、効果的です。
 米国ではSobye`s techniqueという顔面マッサージが酒さの浮腫、紅斑を軽減するのに推奨されています。顔の正中から耳前部に向かって軽く指でマッサージして、リンパ浮腫を取り除く方法です。インターネットで検索して画像を見ることもできます。

酒皶は慢性の疾患なので、治療も長期にわたります。最も重要なことは、この病態を早期に見極め、引き金になる悪化因子を極力避けること、遮光に気を付けるということのようです。
医療側の注意点としては、我々黄色人種では初期の酒皶は見つけにくいということを念頭において診療すべきです。若い女性で敏感肌、石鹸や化粧品トラブルで受診する患者さんの中で酒皶の素因が隠れていないかを問診、視診で確認することが重要です。
酒さ素因の患者さんに化粧かぶれとしてステロイド剤やタクロリムス軟膏を使用するとそれをきっかけとして酒皶様皮膚炎となる場合もあります。
しかし、それを厳密に判定して鑑別することは実地医療ではかなり難しいことではありますが。
悪化時は抗生剤などの内服で炎症を軽減させ、軽快したら日焼け止め、保湿剤などを中心にアゼライン酸、BPO,ニトロメダゾールなどでコントロールしていくのがよさそうですが、現在の日本の医療状況では手段は限られていると言わざるをえません。
一応、参考までに上にあげた外用剤の写真を載せて起きます。
酒さの外用グッズの項目参照

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