東京支部学術大会の特別企画に思うこと

明日は日本皮膚科学会東京支部学術大会が東京で開催されます。
よりによって、この悪天候で開催者会長の日本大学皮膚科の照井正教授は頭の痛いことでしょう。
小生は外来が終わってから出席の予定ですので、午後からゆっくりの参加です。
プログラムをみていたら、特別企画として、「日本の皮膚科治療は世界水準といえるか?~他国の状況を知り、日本の治療事情を考える~」という一寸刺激的な企画がありました。日本の皮膚科の基礎研究は世界レベルだそうです。しかし、治療においては東南アジアを含め他の国でも一般に使われている薬や医療器具が使えなかったりして、他国に遅れをとっているウイークポイントもあるそうです。中国、韓国、台湾、タイからの皮膚科医を招いてこれらの問題を討論をすると書いてありました。日本側からは帝京大学の渡辺晋一先生が講演するそうです。
 渡辺教授はレーザー、真菌、細菌学の専門家で当ブログでも度々引用させてもらっていますが、講演会の度に辛口のコメントを聞かされてきて、なるほどと思っていたところでした。
 東南アジアの若手の皮膚科医を育てるプロジェクトがあって、日本から毎年教育講演に行くそうですが、渡辺教授も行く機会があるそうです。その際に日本の医学は進んでいるのに治療の遅れているのに逆にびっくりされることもあると話されていました。例えばニキビの治療、また乾癬の治療でも世界のスタンダードと一寸ずれているとのことでした。ニキビ治療薬の標準治療薬が使えなかったり、いまだに乾癬にチガソンを使っていたり、MTXが標準治療からはずれていたり、シミの治療でもトランサミンは欧米では使われないなどなどです。
講演で一番盛り上がったのが、日本でやっとアダパレンがニキビに使われだしたこと(東南アジアに何年遅れか)、まだ乾癬にチガソンを使っていることなどだったそうです。
 日本はある意味アジアでは皮膚科学は進んでいて、独自の教科書を持っています。東南アジアなどは独自の教科書がなく欧米の教科書を使っていたりとのことでした。ということは勉強する人は逆に世界基準の進んだ知識を持っていることになります。
渡辺先生の抄録に以下のように書いてあります。
「日本の皮膚科教授は基礎医学に留学するか、皮膚科に留学しても研究目的である。そのため海外でどのような薬が使用されているかを知らない。もちろん欧米の皮膚科教科書を読めば、世界標準治療は記載されているが、そこまで読む人はほとんどいない。そのため、日本の治療は、日本独特の進化を遂げたものになっている。・・・」
 何も欧米が一番でそれに全て右へならい、することもないと思いますが小生のような一開業医でも一寸日本と外国では治療が違うな、と思うこともあります。
 ヨーロッパのEADVやアメリカのAADで臨床の講演をする日本の皮膚科教授はほとんどみあたりません。たぶん研究皮膚科学会では多いのでしょう。優秀な先生も多いので是非外国でも日本の皮膚科ここにあり、というような日本人の講演が聴けるような日がくるといいなと思いました。でも日本人は言葉の問題があるのかなという気がします。
 ただ、上記の話題は一部の分野、トップクラスの話で、日本の皮膚科専門医の診療レベルは相対的にみて世界的にも高いのだと思います。
しかし、皮膚科を専攻していなくても開業すると皮膚科の看板も出せるという現在の日本の診療システムは一寸問題があると思います。
国は医療費の高騰の問題もあり、一般総合診療医を増やしてゲートキーパーとして皮膚病を診察し、難しい皮膚疾患だけを皮膚科専門医に回すという構想を持っているようですが、皮膚科ってそんな片手間で解かるようななまやさしい分野ではないと、(個人的には)思います。
何かとりとめのない結論になってしまいましたが、なるほどと思うところがあり、書いてみました。